ファリス姫と七人の海賊      〜from白雪姫〜



 昔々あるところに、ファリス姫という、肌が雪のように白い、美しい姫がいました。
 継母(妹)のレナ女王はそんなファリス姫に恋慕(笑)し、密かにネラっておりました。
 レナ女王はファリス姫に悪い虫がつかないように、男装をさせ、使用人のように扱っていました。
 しかし、いくらそのような格好をしても、姫の美しさを隠すことはできません。
 ある日のことです。
 ファリス姫は井戸で水汲みをしていました。
 「あーもぉ。何で俺がこんな事しなくちゃならないんだよ」
 ぼやきながらも、逆らうとレナ女王に何されるか分かったもんじゃないので黙々と仕事をこなします。
 「それにしても、暑いなぁ」
 一所懸命水汲みをしていたため、ファリス姫は汗だくになってしまいました。
 「上着くらいなら…脱いでもいいよな」
 辺りを見回すと、幸い人影はありません。
 ファリス姫は上着に手を掛けると、さっさと薄い下着姿になりました。
 「よし、涼しくなった」
 姫は再び水汲みに精を出します。
 だがしかし、駄菓子菓子。
 壁に耳あり障子にメアリー。
 そこへチョコボにまたがった放浪人…いえ、王子様がお城の側を通りかかりました。
 王子様は…王子というにはあまり趣味がよろしくないのですが…、人の気配を敏感に察知すると、壁をよじ登り、中の様子を覗きこみました。
 そこには、なんと薄着で水を汲み上げる姫の姿が…。
 「おおっ、ラッキー!」
 王子はファリス姫のセクシーショット(なのか?)に釘づけです。
 もうちょっと近くで見たいっ、と身を乗り出したその時。
 どさっ。
 マヌケにも壁を乗り越えて落っこちてしまいました。
 「誰だっ!?」
 ファリス姫は誰何の声をあげ、上着をかき寄せました。
 姫は侵入者が見知らぬ若い男なのを知ると、あわてて城の中に逃げ込もうとします。
 女であることが他の人間(特に男)にばれてしまうと、レナ女王が猛烈にお怒りになるからです。
 「ま、待ってくれ!」
 王子はファリス姫の腕をつかみ、引き寄せました。
 「驚かせてすまなかった。頼むから逃げないで、俺の話を聞いて欲しい」
 「いきなり現れたりして、一体何なんだおまえは!?」
 「俺の名はバッツ。旅の王子だ。君のあまりの美しさについ惹かれて来てしまった…。ぜひ君の名を聞かせて欲しい」
 「のぞき」をやっていたことなどはさらりとかわして、バッツ王子は姫を口説きにかかりました。
 まぁ、なにはともあれ古今東西王子と姫が出会ったなら、恋に落ちるはお約束。
 ファリス姫もほのかに頬を染めたりします。
 そんな二人の様子を、塔の上から憎々しげに見つめている影がひとつありました。
 レナ女王です。
 「くっ。何なの、あの男? 私のファリスに…」

 その夜、レナ女王は老兵ガラフにこう言いました。
 「今までファリスの自由にさせていたけど、もうこのままじゃいけないようね」
 ガラフは「どこが自由なんじゃ?」と心の中で突っ込みましたが、それを表に出すことはしません。
 「悪い虫がつく前に、既成事実を作るわ。完全に私の物にするのよ」
 レナ女王の瞳に暗い情念の炎が灯ります。
 わりとまともな倫理観を持つガラフはさすがに慌てました。
 一国の女王がそのような淫らな行いに耽っているようでは大変です。
 レナ女王はガラフに命じました。
 「ファリスを野に連れ出して思いっきり働かせなさい。疲れ果て、眠ったら私が…」
 女王に逆らうことは許されません。それは死を意味します。
 ガラフは内心の動揺を押し隠しながら、レナ女王に一礼しました。

 翌日、ガラフは命令通り、ファリス姫を野に連れ出しました。
 しかし、彼にはどうしても姫を女王の餌食にしてしまうことはできません。
 「ファリス姫、急いでお逃げ下さい!レナ女王があなたの貞操を狙っております」
 「なにっ!?レナの奴、俺に手を出すつもりかっ?」
 レナ女王の怪しげな振る舞いを薄々感づいていたファリス姫は、ガラフに追いたてられるように海へ向かって逃げ出しました。

 今までお城に軟禁状態だったファリスは、外の世界を知りません。
 途方にくれたりもしましたが、そこはなんとかなるものです。
 吟遊詩人のジョブに「あやつる」アビリティでもつけていたのか、歌で海の生物たちを手なずけた姫は
 「浜辺で寝るわけにはいかんしな。どっか寝床に案内してくれよ」
 と、動物たちに案内役を頼みました。
 動物たちが連れていったのは、海を引いた洞穴を改造した「隠れ家」のようなところ。
 ファリス姫はどう見ても生活感溢れている他人の家にずかずかと踏み込み、物色し始めました。
 「それにしても随分と汚いところだな。……そうだ!」
 姫は、動物たちを総動員してアジトの掃除をさせ、住人に恩を売って泊めてもらうことを思いつきました。
 海洋生物がどうやって掃除をしたのかは謎ですが、ともかく数時間後、アジトはぴかぴかに生まれ変わりました。
 「ふわぁぁ。今日は疲れちまった」
 姫は掃除の大半を動物に押し付けたくせに…いえいえ、危機からの逃避行のせいですっかり疲れ果て、二階にある住人のベッドで眠ってしまいました。

 そこへ帰って来たのはなんと、七人の海賊たちです。
 彼らはすっかり綺麗になったアジトに戸惑いつつ、二階の物音を聞きつけました。
 「何かがいるぞ!」
 恐る恐る入ってみると、そこには、眠っているファリス姫の姿が…。
 「おい、随分といい女じゃねぇか」
 「このねーちゃんはどこから来たんだ?」
 ざわめく海賊たちの声に、姫は目を覚ましました。
 「ん…?と…、ああ、住民の皆さんのお帰りか」
 ファリス姫はベッドから身を起こすと、好奇の視線で見つめている海賊たちに会釈しました。
 「勝手に入って悪かったな。俺はファリス。わけあって女王に追われてるんだ。すまないがここでしばらく身を隠させてもらえないか?」
 「女王だと?厄介事はごめんだぜ」
 海賊の一部は渋い顔を見せました。
 「頼むよ。掃除、洗濯、料理、なんでも(動物たちが)やるからさ」
 ファリス姫はかすかに瞳を潤ませて懇願します。
 いわゆる「必殺のお願いモード」です。
 海賊達は姫の美しさにすっかり魅せられてしまいました。

 こうしてファリス姫と七人の海賊達の共同生活が始まります。
 「おらおら、手ぇ洗わねぇと飯抜くぞ!」
 姫はあっという間に主導権を握り、ボスとして君臨してしまいました。

 一方その頃、レナ女王は…。
 「くっ。ガラフの奴、裏切ったわね。こうなったら私の手でやるしかないわ」
 お城にある怪しげな地下室で怪しげな本を広げ、何やら画策しておりました。
 「ふふっ。ふふふふふ…。見つけたわ…。強力惚れ薬の作り方!!」
 どうやら実力行使に出るようです。
 「なになに?この薬の入ったリンゴを食べると、いったん昏睡状態に陥る。…目覚めはキスによってもたらされ、その時目に入ったものに惚れてしまう…。ふふ…いいわ…。これでファリスは私のものね」
 レナ女王は変装の為、自らにオールドをかけ、老婆となりました。

 再び海賊のアジト。
 海賊とファリス姫は酒盛りの真っ最中です。
 歌い踊り、それはそれは楽しい催しでした。
 そのような中、海賊達に話をせがまれた姫は、かつて心を寄せてくれたあの王子のことを思い、語るのです…。

 楽しい日々は飛ぶように過ぎていきました。
 いつものように海賊は仕事に出かけ、ファリス姫は動物たちに料理をさせています。
 とんとん。
 ドアがノックされました。
 ファリス姫がそっとドアを開けると、そこには一人の老婆が立っておりました。
 「何か用か?」
 明らかに怪しげな老婆に対し、ファリス姫は警戒心もあらわに構えます。
 「おいし〜いリンゴがあるんだよ。お嬢さん、お一ついかが?」
 「俺は要らないけど…」
 「うう…そんなつれないことを…。聞いておくれよ娘さん。このリンゴを全部売らないと嫁にいぢめられるんだよぉ。食事ももらえないんだよぉ」
 泣き崩れる老婆の哀れな姿にファリス姫は心を動かされました。
 「わかったよ。それ、買うから…」
 「おお、なんと心優しい娘さんじゃ!それではの、この特別良いリンゴをお分けしよう。新鮮なうちがええぞ。ささ、齧ってみなされ」
 「え、別に今食べなくても…」
 ファリス姫は躊躇しましたが、ぐいと差し出す老婆のリンゴを断ることはできません。
 渋々受け取ろうと手を伸ばしたその時…。

 ばっしゃーん!!!
 水辺から「しるどら」が老婆めがけて体当たりをかましました。
 「しるどら」は老婆のリンゴの細工を見破っていたのです。
 「うひゃぁ!!」
 老婆は吹っ飛ばされてしまいました。
 「おい、しるどら!おばあさんに何てことするんだよ。お年寄りは大切にしなくちゃダメだろ!」
 「きゅ−ん…」
 ファリス姫は慌てて老婆を助け起こしました。
 「婆さん、大丈夫か?」
 「む…胸が苦しい…。少し休ませてくれ。水を…」
 「分かった。肩を貸すから」
 ファリス姫は老婆を連れて部屋の中に入っていきました。
 水をもらった老婆は一息つくと、再びリンゴを取り出しました。
 「こんなに親切にしてもらって…。実はの、このリンゴは[魔法のリンゴ]なんじゃ」
 「魔法のリンゴ…?」
 ウソくせぇ…と突っ込んではいけません。これはファンタジーです。
 「おぬし、好きな人がおるだろう?」
 「(どきっ)な、何言ってんだよ…」
 「このリンゴを齧るとな、願いが叶うんじゃよ。離れ離れの愛する人と再びあいまみえたかろう?(ふふふ…この私、レナとね…)」
 「そ、そんなの…いねぇよ」
 突っぱねるファリス姫ですが、心の中にあの王子の面影が浮かんだのは言うまでもありません。
 「まぁ、そう言わず…。この老婆のおせっかいを受けとめてやっておくれよ」
 そのように言われてしまうと、さすがのファリス姫も拒むことはできませんでした。
 それに、正直言って、バッツ王子に本当に逢えたら…という思いもあったのです。
 ファリス姫はリンゴを手にとりました。
 そして…。
 一口齧ったが最後、ばたっと倒れてしまいました。
 「ほーほほほほほほほ!やった。やったわ!これでファリスは私のものよ!!さぁファリス、私の熱い口付けで目覚めるのよ!!!」
 老婆…否、レナ女王は高らかに笑い声を上げると、ファリス姫に顔をぐっと近づけました。
 その瞬間。どっぱーーーん!と水飛沫が上がり、しるどらと海賊達が突入してきました。
 ファリス姫の危険を察したしるどらが海賊達を引っ張ってきたのです。
 「お頭姫様をよくもー!」
 「魔女め、成敗してくれる!!」
 さすがのレナ女王も多勢に無勢。
 「ちくしょーー邪魔するなぁぁ」
 叫びながら逃走をはじめました。
 逃げるレナ女王を海賊達は追っていきます。
 ついにレナ女王は断崖絶壁に追い詰められてしまいました。
 「くっ…」
 前門の崖、後門の追っ手。
 しかしレナ女王は不敵な笑みを浮かべます。
 「ふっ。ふふふふ…この私が…。この私が、これで終わると思うなぁぁぁぁ!!!!」
 捨て台詞を叫び、ばっと身を踊らせると、あっという間に崖の下へと吸いこまれるように落ちていきました。

 何とか女王を追い払った海賊達ですが、ファリス姫の瞳は閉じられたまま。
 死してなお美しい姫を、海賊達は埋葬する気は起きませんでした。
 海賊達は姫を金とガラスで作られた棺に納め、花を手向け、祈りの日々を過ごします。
 そんなある日、バッツ王子は森で眠る美しき姫の噂を聞きつけました。
 急いで駆け付けると、そこにはあの愛しいファリス姫が…。
 「ファリス姫…。やっとお会いできたのに、その瞳は開かれないのか。
 どうか…どうか、もう一度、その蒼い瞳に俺の影を映してくれ。もう一度その白い手で俺の頬に触れてくれ」
 至極真面目になんだかなぁな台詞をほざきつつバッツ王子はファリス姫にそっと口付けしました。

 リンゴの呪いは愛の口付けによって解かれる…。

 ファリス姫の頬に赤みがさし、再び命のともし火が灯ったことを伝えます。
 今、目覚めの時が訪れたのです。
 「ここは…。バッツ王子…?」
 「ファリス姫!俺は、あなたを探しつづけていたんだ。やっと逢えた。これからはずっと一緒にいよう」
 古今東西王子と姫が出会ったら…(以下略)に加えてリンゴの惚れ薬の効果は抜群でした。
 これまでのいきさつなどはどうでもよいのです。 
 「愛する人に出会えてハッピー」こそがテーマなのです。
 もはやこの二人のラブラブを妨げるものはありません。
 バッツ王子とファリス姫は王子の愛羽ボコの背に乗って旅立ちました。
 愛の明日に向かって。




 どーしてアジトを出て旅立ったのかって?
 建前は「バッツ王子の故郷へ行く為」。でもホントは…レナ女王から逃げる為(笑)


     [いつもの戯言]
 なんじゃこりゃ〜のパロパロ小説です。
レナの性格等は表ウェブドラマを参考にさせていただきました。(おかげでキレまくり)
でもドラマの方がすごすぎてこのレナはまだまともな方…じゃないですね(^^;)
ちなみにこの物語は「ディ●ニー版白雪姫」を基にしてますので、そちらの方もご覧になると、
どこの部分をどうパロっているかがおわかりになってより楽しめると思います。(え、楽しめない?ははは〜)
強引な展開は「おとぎばなし」と思って許して〜。
    それでは。


  合言葉は「愛が全てだ!!」

ぎゃはは!面白いです〜!!!
レナ最高!!でもたしかにここでしか通じませんね(笑)
ディ●ニー白雪姫…機会があったらみてみますね☆

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