The reason for existence
〜存在理由〜
別れなんて、慣れていた。
誰かとずっと一緒に居たいなんて、思ったことはなかった。
彼は気ままな風だった。
彼女と出会うまでは・・・・
ほんの気まぐれだった。
ゴブリンに襲われていた少女、レナ。
そして、記憶喪失の老人、ガラフ。
見ているだけでも不安なこの2人を、風の神殿まで送ってやろうと思ったのは。
その途中で、「彼女」に会ったのだ。
海賊から船を盗ろうとしたバッツ達は、あっけないほど簡単に捕まった。
そこへ、彼女は現れた。
海賊の頭・・・そう、男として。
気を許せる人などいなかった。
ずっと男を演じていくのだと、そう思っていた。
彼女は孤高の炎だった。
彼と出会うまでは・・・・
海賊から船を盗ろうとした、間抜けな泥棒達。
中に1人、女がいた。
タイクーンの王女と名のる少女。
自分と同じペンダントをした、不思議な少女。
彼女に、ファリスの視線は釘付けになった。
命すら危険な状況下で、彼女は臆することなくファリスを見つめていた。
真摯な瞳で。
彼女に興味が湧いた。
風の神殿へ、ついていくのも面白いかと思った。
海賊の頭としてではなく、ファリスとして。
そう、ほんの、気まぐれだった。
旅をしていて、バッツとは何故か気が合った。
何でも話し合えた。
バッツになら戦場で背中も預けられた。
でも・・・・。
いつからか、怖くなった。
バッツに惹かれている。そんな自分に、気付いてしまった。
そして、ファリスはバッツに秘密があった。
それを言ってしまったら、関係が崩れてしまう気がした。
男だと、そう思っていた。
その上で、惹かれていた。
気付かれるのが怖かった。
いい仲間で居たかった。
突然だった。
予想もしてなかった。
シルドラとの突然の別れ。そして、漂流。
船の墓場。
そこで知った、ファリスの正体――
不謹慎だと思った。
彼女は親友との別れに落ち込んでいる。
それなのに俺は―・・・
ファリスガオンナデアルコトヲ、ヨロコンデイル―・・・・
シルドラを喪ったことは、悲しかった。辛かった。
でも、前に進まなければならなかった。
それをバッツは支えていてくれた。
前と変わらずに。
それがうれしかった。
ファリスと会わなくなって、どれくらい経ったろう。
世界が元に戻ってから、ファリスは王女としてタイクーン城に戻り、俺は旅を続けている。
結局、想いは伝えられなかった。
拒まれるのが、怖かった。
それでも、ファリスへの想いは日々強くなっていく。
狂おしいほどに、ファリスが愛しかった。
彼女だけが、頭に浮かぶ・・・・・
バッツと別れて、どれくらいになるだろう?
風のように、彼は去っていってしまった。
何も、伝えられないうちに。
城は退屈ばかりだ。
海賊育ちの俺には馴染まない。
風を求めて、草原に出た。森を歩いた。そして、海を眺めた。
そんな俺を、城の者は良く思っていないに違いない。
例え突然居なくなったとしても、気にかけるのはレナくらいだろう。
「どうして会いに来てくれないんだよ・・・・」
深夜のバルコニー。ファリスの口を突いて出てきた言葉。
返答は、無い。
「バッツ・・・・」
「呼んだか?」
不意に後ろからかけられた声。
振り向かなくても解る。
聞きなれた声。
待ち望んでいた声。
バッツだ。
「今まで何してたんだ?1度も会いにも来ないで。」
振り向かぬまま、ファリスは言う。平静を装って。
そうしないと、壊れてしまいそうだった。
「怖かったんだ・・・ファリスに会うのが・・・・」
ファリスに歩み寄りながら、バッツが言った。
苦笑いを浮かべながら、小さな声で。
「怖い?」
ファリスが問う。
「止まらなくなりそうで」
「???どういう意味だよ・・・??」
答えの意味が解らず、ファリスは振り返って訊き返した。
「ファリス、最近どんな感じだ?」
バッツは、ファリスの問いには答えずにファリスの近況を問うた。
「え?あ、あぁ、退屈だよ、やっぱり俺に城は合わないな・・・」
ファリスが伏せ目がちに答える。
「それに・・・・」
「それに・・・・?」
「なんでもない!それよりバッツ、おまえの方こそ何やってたんだよ」
ふいっとバッツから顔を背けてファリスが言った。
「別に・・・・昔と変わらずに旅をしてたさ・・・・・」
互いに心の奥の想いを言い出せぬまま、取り留めのない、途切れそうな会話が続く。
「なぁ、バッツ・・・どうして俺は王家なんかに生まれたんだろうな?」
しばらくしてから、ためらいがちにファリスが切り出した。
「こんなところに生まれてなければ、俺は俺として生きていけるのに・・・」
「ファリス・・・?」
「ココで求められてるのは、俺じゃない。王女としての、サリサだ」
「ファリス、何言っ・・・?」
「バッツ・・・俺は、俺はココでは・・・・」
「やめろファリス!・・・それ以上、それ以上言うな!」
―――要らない存在なんだ―――
そういおうとしたファリスの言葉を、バッツが怒鳴るようにして遮った。
ファリスを強く強く抱きしめながら。
「ファリス・・・おまえは要らない存在なんかじゃない。
おまえは・・・おまえは俺にとって、かけがえの無い存在だ!」
バッツの声、その語尾が震えている。
「バッツ・・・?」
突然のことに頭が追いつかないのか、ファリスはただ疑問符を浮かべていた。
「自分を要らない存在だなんて思うなよ・・・
少なくとも俺には、なくてはならない存在なんだから・・・」
抱擁を解いて、バッツは優しく言った。
「・・・バッツ・・・」
じわりとファリスの瞳が潤む。
そして大粒の涙がこぼれだした。
「あ・・・あれ?・・・なんだよ、コレ・・・?」
再び、しかし今度は優しく抱きしめながらバッツは言った。
「辛い時は・・・泣きたい時は泣いてもいいんだ。おまえはおまえなんだから・・・
タイクーンの王女でも、海賊のおかしらでもなんでもない、俺の大切なファリスなんだから・・・」
「ふ・・・っく・・・う・・・っ・・・・・」
その言葉を聞いて、ファリスは泣き出した。
バッツに抱きしめられたまま、声を殺すように。
バッツはファリスの顔を伝う涙を拭うように優しくキスを降らせた。
頬に、額に、そして唇に―・・・
ファリスは拒まなかった。
静かにバッツのキスを受け入れた。
「ファリス・・・愛している」
長いくちづけのあと、唇を離してバッツが言った。
「俺も・・・愛してるよ・・・」
何をバカなことを・・・
いつものファリスなら、照れくささのあまり、そう言って突っぱねていただろう。
だが今は違った。
素直に受け入れることが出来た。
どちらからともなく、再び互いの唇が近づいてゆく。
深い、深いくちづけ。
二人は互いに互いを求め合っていた。
より近くに互いを感じたかった。
だから―――・・・
・
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・
互いに触れあい、語り合ううちに、いつの間にか眠ってしまったファリスを見て、
バッツはどうしようもない愛しさがこみ上げてくるのを感じていた。
「このままどこかへ連れ去ってしまおうか・・・・」
ファリスをそっと抱きしめて、小さくつぶやく。
城にやって来た理由―ファリスを連れ去ってしまいたいという衝動は、よりいっそう強くなっていた。
「いいよ・・・行こうか・・・・」
不意に、眠っていたはずのファリスが口を開いた。
「?!」
突然のことに、バッツは驚きを隠せない。
「城のコトはレナに任せておけばいい」
どうせ俺は何もやってないしな、と、苦笑いを浮かべながらファリスは付け加えた。
「ほ、本当に良いのか?」
信じられない・・・そういった様子で、バッツが問いかける。
「城を捨てるんだぞ?もう戻れないんだぞ?本当に―・・・」
―――本当に良いのか―――
そう言おうとしたバッツの口を、ファリスの唇がふさいだ。
「俺はな、バッツ」
しばしのくちづけのあと、微笑みながらファリスは言った。
「誰よりも、もう、おまえと離れていたくないんだよ・・・だから、いいんだ」
「ファリス・・・!」
うれしさでうまく言葉が出てこない。
代わりにバッツはファリスを力いっぱいに抱きしめた。
翌朝―――いつものようにファリスを起こしに来た女官は、
ベッドに1枚の手紙を見つけ、大慌てで女王―レナ―に知らせに走った。
手紙にはファリスの字で、こう綴られていた。
「Sorry.
I stayed with you for a long time,but I leave here after all.
Because I found my reason for existence.
It was being with Butz.
So,I'll gone with him,and never back. I'm reary sorry.
Faris Scherwiz 」
すまない。
長い間居ついちまったけど、俺やっぱり出て行くよ。
解っちまったから。
俺が生きる理由は、バッツと共に在る。
だから行くよ。もう、戻らない。本当にすまない。
それを見たレナは、苦笑いを浮かべて一言言った。
「もう・・・。私の大切な姉さんを不幸にしたら、絶対に許さないからね、バッツ・・・」
その後、大臣により、失踪したサリサ姫の捜索隊が幾度も派遣された。
しかし、姫が城に戻ってくることは無かったという。
My reason for existence was being with Butz.
―――俺の存在理由は、バッツと共に在る―――
FIN.
あとがきトカ。
中途半端でスミマセン(^^;
俺にはコレが限界デス。
抜けてる部分で何があったのかは
ご想像(妄想?)にお任せします故。
つーか、最後のせいぜい5行の英文を書くために
2時間かかったなんて言えやしないぜ(爆死)
しかも正しいかどうかも解りゃしねぇ(更爆)