〜シルドラ〜





僕は孤独だった。
だから、一人でいる自分が「寂しい」と思うことを
否定するために、がむしゃらに船を襲っていた。
しかし、あの日、僕の前に一人の少女が現れてから。
僕はかわった。




〜シルドラ〜




僕は人間じゃない、だけど、
ファリスは僕を「ペット」としてみるのではなく、
「親友」いや、「姉弟」のように見てくれた。
僕はファリスが好きだった
これからも一緒にいられると思った。


でも・・・・・




>トルナ運河


レナ 「キャァ!!」
バッツ 「レナ!大丈夫か!?」
ファリス「ちっ!なんだってこんなタフなんだ!」

ファリス達が闘ってる、
でも僕は何も出来ない、船をつながれているのに、
下手に動いて皆を振り落とすことになったらいけないからだ
僕は目の前でファリス達が闘っているのに自分が何も出来ない、
凄く悔しかった。

ドカッ!
という激しい衝突音がなった。
どうやら皆が勝ったらしい、

ファリス「まったく、本当に厳しかったぜ」
バッツ 「一応、傷の手当てをしようぜ」

巨大なロブスター、「カーラボス」を倒して一安心しているのか、
傷の手当てをはじめた。

僕は「こんなモンスターの住処(すみか)のようなところにいるのにのんきだなぁ」
とか思いながらも少し泳ぐ速さをゆるめていた。

しかし、その時水の流れが異常な事に気がついた。
さっきファリス達が闘っていたモンスター「カーラボス」が
こっちに突撃してくる

僕は船の上を見た。
四人ともまだ傷の手当てをしている、
今は闘える状態じゃない、
非常にまずい状態だ、
このまま船に突撃されたら・・・・

僕はそこで決心した。
固定されている鎖をかみ砕き、
船から離れて船と「カーラボス」の間に入った。

ドシャッ!
鈍い音と共に、僕の体にそのはさみが食い込んだ、


ファリス「!?・・・ああ!シルドラ〜〜!!」

ファリスの声が聞こえる、
僕の名を呼んでいる

僕の名を呼ぶその声は次第に小さくなっていく、
僕の目の前の水は既に赤く染まってきている、
そして、その光景すら薄くなっていく、もう・・・目が・・
・・・僕もおしまいなのだろうか、
でも、ファリス、君を守れて良かった・・・・




シルドラ「・・・・・・?」
僕は目覚めた。
何故だろう?
僕はファリスを守って・・
あんなに血が出て・・・・
でも生きている、
僕は生きている、ファリス達は助かったんだろうか?

ただ沈まないように体を傾けて流されるだけ、
そうした状態で僕は何日間かさまよった。


日にちが経ったせいか、
僕は再び泳ぐことが出来るようになっていた。
勿論、傷が完全にいえた訳ではないのだけれど

あれからファリス達がどうなったのか、僕は心配でならなかった。
風が止まった今、船は流されるだけなのだから、
どこか危険な所に流されてしまっているかもしれない。

僕は海の上を泳いで探してみたが、海に浮かんでいる船は一つもなかった
まさか・・・
嫌な予感がした。

船の墓場・・そこにたどり着いてしまったのかもしれない・・
だとしたらファリス達は死者たちに襲われてしまう・・・
僕は船の墓場に向かってみた。

ファリス達が乗っていた船が、一番外側にある、
到着してからずいぶんたつようだ、
人の気配はしない

ファリス達は無事に脱出できたのだろうか?
凄く心配になって
沈みかけた船の窓を覗いてみる、
やはり既にだれもいなく、くもの巣の後さえある、

これ以上探しても、船の墓場にはいないと理解した僕は
再びその近くを探すことにした。


しばらく泳いでいると、
塔が見えた。
「ウォルスの塔」と呼ばれる青い塔、
その近くまで僕がおよいで行った時、
信じられないことがおきた。

塔が
ドォンという音と共に崩れ始めた。
そして、最上階の方からは四つの人影が・・・

ファリス!

僕はもう何も考える事もできず、
死にもの狂いで泳いだ

四人が海の上に落ちて来て気を失っている、
このままでは落ちてきた塔の破片が直撃したりするかもしれない
僕は四人の所へ近づいた

ファリス「・・・・シルドラ・・・?シルドラなのか!?」
僕がファリスの近くまで来た時、僕に気がついた
ファリス「よかった・・・シルド・・・ラ・・・」
僕を見て、
ファリスは泣き出してしまった。
僕は四人を口に含んで
その場を離れることにした。
塔の破片が何個も背中に刺さったが、
痛さを感じている暇はなかった。
急いで安全な所へ・・・


僕が岸に着くと、ファリスが僕の口から勢いよく出てきた。
そして後の三人を出した後
ファリスは僕の前に走ってきた。

ファリス「シルドラ!良かった・・・生きてたんだ・・・シルドラ・・!」

僕の鼻の所に抱き着いて泣きじゃくるファリス、
何時もどんな時でも強気で時にはきつい事を言ったりするときもある、
でも、本当はファリスは、
僕なんかのためにでも
いや、どんな人にでも涙を流してくれる。
優しい女の子なんだ。
僕もファリスのその言葉と
心が嬉しかったのか、
何時の間にか涙を流していた。

再会できて良かった、でも・・・

ファリス「シルドラ?おい!シルドラ!!」

僕はもう、行かなきゃいけないみたい・・・
運河の時みたいにはいかないみたいだ・・・・
体が動かない・・・


そのまま海の波に流されて、
僕の体はその岸からはなれていく、
ファリスが必死で泣き叫びながら僕に何かを言っている、
でも、もう声も聞こえない・・・

目に映るファリスの隣には、一人の青年がいて、
必死に慰めている、
彼ならファリスを守ってくれる・・・
僕はそう信じ、
目を閉じた。


さようなら・・・ファリス・・
今まで・・本当にありがとう・・・







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