『she and sea』
君の言葉はまるで呪文のよう。
君の瞳はまるで宇宙のよう。
このまま惑わされて、吸い込まれて。
君の心まで入っていけたらいいのに。
「・・・でね、その後ガラフったらね・・・、・・・バッツ?」
ある晴れた昼下がり。
急に話し相手の相づちが止まったので、レナは顔を上げた。
「どうしたの?」
バッツがそっと遠くを指差す。
レナがそちらを見ると、切なそうにこっちを見ているファリスと目が合った。
ファリスが慌てて立ち去っていく。
「姉さん?」
「最近あーやっていつも見てくるんだ。なのに、目が合うと逃げていく。
一体何なんだろうな?」
バッツはため息をつきながらつぶやいた。
「あんなに苦しそうな顔して・・・オレ何かしたかな?」
バッツは真剣に悩んでるようだ。
「やーね、バッツったら。そんなことも分からないの?結構鈍いのね。」
レナは楽しそうに笑った。
彼女にはすぐ理解できることだからだ。
「女の子があんな切ない目で見てくるなんて、理由は一つしかないじゃないの。
しっかり考えてみて。」
レナはそう言って、宿屋へ帰っていった。
いつからだったか。
彼女の気持ちならなんでも分かるはずだった。
実際今までそうだったんだから。
だけど・・・今の彼女の気持ちは全然分からない。
泣きそうで、苦しそうで。
でも何か言いたそうな弱そうな、初めて見る顔。
今のレナの話だと、どうやらオレに怒っているという訳ではないようだ。
だけど今の状態を続ける訳にもいかないし、ファリスには前のように笑って欲しい。
彼女の辛そうな姿を見るのはもう嫌だ。
シルドラがいなくなった時のように、彼女にはもう泣いて欲しくない。
「思いきって聞いてみるか・・・。」
バッツはゆっくりと立ち上がった。
風に乗って、潮の香りがする。
きっと彼女はあそこだろう。
「・・・バッツ。」
ファリスは青年の姿を確認すると、ゆっくりと顔を上げた。
目眩がするような、上下一面の青。
ファリスは立ち寄った町に海があると、1日中浜辺で時間を潰す。
白い砂浜に彼女の姿はよく映えた。
「やっぱりここに居たか。ホント海が好きなんだな。」
「海はオレの家族みたいなもんだからな。海と共に生きてきたから。」
優しげにファリスが微笑む。
バッツはその隣へ座ると、しばらく波の音に耳を澄ませた。
「なあ、ファリス?」
「うん?」
「オレ、お前のことが大切だ。」
「・・・は!?」
ファリスの顔が一気に赤くなる。
「仲間として以上に・・・つまり、恋愛対象として大切なんだ。」
「・・・!!」
唐突の告白に、ファリスは言葉も出ない。
「だからさ・・・お前が元気なさそうなの見るのすごく辛いんだよ。
オレに言いたいことがあるのなら言ってくれ。なんでもするから。」
「別に言いたいことなんて・・・」
うつむいてしまったファリスにバッツはなお詰め寄る。
「嘘つけ!お前いっつもじとーっとオレを見てただろう?」
「・・・っあれは・・・!」
ファリスの顔がますます赤くなる。
「・・・・・・あれは、さっきのお前のセリフをそのまま返すぜ。」
オレのセリフ?
「『じとーって見てた』ってやつ・・・?オレもファリスのこと見てた??」
「・・・じゃなくて!オレもバッツのこと・・・好き・・・ということ。」
「!!?」
今度はバッツの顔がめいっぱい赤くなった。
今更ながら自分がどれほど鈍いかが思い知らされた気がする。
「何度も言おうとか思ったけど、言えなかった。オレは全然女らしくないし、レナのようにか弱くもない。
そう思ったら、このまま黙っていようかなって・・・。」
だから、オレのことをあんな切なそうな目で見ていたのか。
言いたいけど、自分に自信がなくて、いつも言葉を呑み込んで・・・。
「・・・馬鹿だなあ。オレは最初からファリスしか見えてなかったのに。」
そっとファリスの手に自分の手を重ねる。
「今度からはオレに何でも言ってくれよ?オレは絶対にファリスを裏切らないから。」
「・・・うん。」
ファリスは今までで、一番綺麗で可愛く微笑った。
(画:天瀬 優さん)
君の心に入っていったら、まるで海に抱きしめられたように心地良かったよ。
今度は君が入ってきてよ。
笑って触れ合って、感じあって。
二人の時間をゆっくり共有していこう・・・。
END
作文者後書き。
優ちゃん、ごめんよう。やっぱり駄文になってしまったι
待たせた上にこれじゃあ・・・。
どーもすみませんでした〜(><)←逃亡
挿絵後書き。
このステキな雰囲気を見事にぶち壊してる張本人天瀬です(死)
ラヴラヴなんだけど甘々すぎないトコロがさすがかなちゃん(^^)
私も頑張って乙女風味(謎)にしてみたつもりなのですが…
いかがなものでしょうか??
戻る