炎風〜As I Feel , You Feel〜
もしできることなら
こみあげる思い とどいてほしい
ささやかな願い かなえてほしい
大地はあたたかく やさしく ほほえむの
そして……
そして……
大声をあげようかと思った。ただ、目の前を朽ちた木の葉の一枚がよぎっただけだというのにだ。深く吸い込んだ息を、今度はゆっくりと吐き出した。
脚にベルトで縛り付けた短剣の獣皮が巻かれた柄に、いまだに指が触れている。よく使い込まれ、ファリスの薄い手に馴染んだ短剣から離れるのは、既に不安ですらあった。
(なんて憶病者だよ、オレは)
わずかに自嘲した。
樹々の梢が頭上で囁いて、猛ったファリスを宥めるかのように星灯を煌めかせる。月のない夜だった。大して木の葉の数が多いわけではなく、昼間は足元にまで十分に日光が差し込んだ。木陰は涼しくて、草原を歩くよりもよっぽど楽だった。だが、開けっぴろげに旅人を手招いた森は、日没と共に態度を豹変させた。
決して視界には捉えられないのに、それなのに、確かに、いる。暗闇に息づく生き物の気配が、ファリスの背筋を逆撫でする。
(ち……)
苦く舌打ちして、ファリスは大樹の幹に背中を預けて座った。まだ肩が上下している。テントを押し包むかのような気配に弾かれるように飛び出して、もう三十分は過ぎているだろうか。野宿には慣れている筈なのに、どうしてこんなに……怯えているんだろう。
ファリスの際立って整った容姿は、一歩間違うと丁寧に形作られた精巧な人形めいて見える。そして彼女の海碧の瞳では、精気が少しずつ弱まっていた。その眼光こそが、ファリスをファリスたらしめる、重要な要素だと言うのに。
また、溜息をつく。
夕方、仲間と囲んだ焚火に、まだ火種が残っている事を確認すると、ファリスは乾いた枝でそれを突つきまわした。新鮮な酸素を得た炎は再び紅く燃え上がり、途端、周囲の樹木と共にファリスの意識をも染め抜いた。
森が、燃えている。
ムーアの大森林が、燃えている。
燃えているのは……森じゃない……じゃあ何だ?
……オレか……?
物事が数珠のように繋がっていく。はぜる枝、炎に嘗め尽くされて倒れていく樹々、失われた森、現れたエクスデス、……ガラフ。そしてまた火。
空回りを続ける思考の渦に、ファリスは思わず呻いた。額を押さえて頭を振る。こんな事では駄目だ。
柔らかな紫髪に知らず知らずの間に、指を絡めていた。細い輪郭を辿って落ちる髪を、ごく無造作に掻き揚げ、梳き下ろす。
「何だろうな……」
わずかに歪んだ口元に、皮肉っぽい微苦笑が浮かぶ。
自信満々に舳先に立って、闊達な笑い声を響かせ、気侭に海を駆るファリスから、どうしてこの気弱な微苦笑が想像できるだろう。だが、そんな表情もまた、ファリスによく似合うのだった。
沸き上がった苛立ちを抑えられず、荒っぽい手付きで紫髪を掻き回した。
仲間の眠るテントに戻ろうとは思う。だがファリスはどうしても今、あの閉塞感に耐えられなかった。ふとした瞬間に思うのだ、もしかしたなら、明日にでもこの内の一人が欠けてしまうのだろうか……ガラフのように。
ガラフのように、死んでいくのか。
髪に埋めていた手が力を孕んだ。わずかに天を仰いで、唇を噛み締め真一文字に結び、そして眼を伏せる。
ずっと自分は過信していたのだ。人が死なないわけはない。これまで誰も傷付かなかったのが幸運だったのだ。容易く自分達は砕かれてしまうのだ。
次は誰だ。倒れていくのは誰だ。
自分か、レナか、クルルか、……それともまさか……?
勇気って何
なにかをすること?
それともなにかをしないこと?
炎はあかく ただあかく 頬を染め 空をこがし
そして……
そして……
凪いでいた風が俄然力を取り戻して、ファリスを襲った。炎が風に応えるかのように、高く燃え、火の粉を噴き上げる。
同時にファリスは地面を蹴りつけていた。上衣の裾に滑り込んだ手が、目当ての物を探り当てる。そして抜き放った刃を、枝の絡んだ低木の茂みへと、気配の位置へと、寸分の違いなく突き付けた。
「……怖いな、ファリスは」
「何だバッツか……驚かすなよ」
癖のあるブラウンの髪の一房を、切り落とされるか落とされないかのぎりぎりの線で、青年は短剣を捕らえていた。いや、正確に言うならば、ファリスの右手首を自分の右手の内に捕らえていた。
「モンスターだとでも思った?」
腰を落とし、短剣を構えた、言わば戦闘体勢のままのファリスが見上げてみれば、バッツの瞳は笑っている。突然、深く押し隠していた怯えを暴き出された羞恥と、利き腕を束縛されている事への憤りを感じた。
形のいい眉が寄り、跳ね上がる。
「いいから離せ」
語調も荒く言い切ると同時に、右腕を大きく振ってバッツの手を払う。短剣を鞘に納めるなり、ついと顔をそらして、再び焚火の前に陣取った。
バッツは髪の生え際を掻いた。
「ファリス? なあ、おい」
「五月蝿い黙れ、折角の夜が台無しだ」
「いいじゃないか、ちょっとぐらい付き合えよ……独りで飲むには勿体無いんだ」
すげない態度にも全く動じずに、ファリスの顔の前で革の水筒を揺らす。コルクの栓の隙間から、きつい酒精が漂い始めた。
「滅多に手に入らない火酒なんだぜ? なあ、二人で一献やろう」
「……」
こめかみに手をあて、ファリスは俯く。どうして自分はこんなに誘惑に弱いのだろう……情けない。
火酒はかなり、相当きつかった。喉の奥が熱く灼け、吐き出す息すら焦げついている。成程、これはレナとククルには薦められない。ファリスでさえ、噎せてしまうのを必死で堪えている。
普段は四人で輪になって、向い合せに座るバッツが珍しく隣にいた。『海賊の頭領』であるファリスが、酒の席で彼に醜態を見せられるわけがない。
熱の塊をできるだけ平静な顔で飲み下し、水筒をバッツの手に戻した。
「おいおい、大丈夫かよ」
「大丈夫に決まってる」
「まあ、あんまり無理するな」
「するか、そんなの」
水筒に口をつけたバッツが、肩を震わせているのが解った。
生来の性格が災いした。何も考えずに、いや、考えるよりも先に躯ごとバッツの方に向き直って、ファリスは思い切り不機嫌な声で訊いた。
「何笑ってるんだ」
「何怒ってるんだよ?」
一気に火酒を呷り、それから空蒼の視線だけをファリスに向ける。
「……なあ?」
バッツは強く答えを求めない。しばらく黙ってファリスの顔を見つめていたかと思うと、そのまま両脚を放り出して横になった。躯の脇に力をなくして投げ出されていたファリスの手に、硬質の髪が触れた。
「怒るなよ。疲れちゃうだろ、ファリスがさ」
両腕を枕代わりに頭の下に敷いて、眼を閉じる。焚火の程よい熱と、柔らかく頬に寄せる風とが、バッツをすぐさま夢の淵へと導いたようだった。
きこえてくるの あの時のささやき
見えてくるの あの時の色
感じるままに感じていたい
水は何処から流れてきたの そして何処へいくの
そして……
そして……
悪戯めいて吹く風に誘われるまま、炎が踊っている。微睡んでいるバッツの顔に落ちる影もまた、踊っている。
火酒をちびり、ちびりと舌先で舐めとりながら、ファリスは海碧の視線を彷徨わせていた。くっきりと線が引かれた、暗闇との境目を何度も行き来する。そこには何もない。ただ影が棲むだけだ。
ファリスは、少女ではない。灯火がなければ怖くて部屋に入れない、少女とは違う。
そうだ、さっきまでの恐怖など、もう消えてなくなってしまった。ファリスの内側の、どこにもない。どんな奥底を覗いてみても、見つからない。
少し安心した。まだ闘っていけるだろう自分に、ホッとする。立って、自分の脚で前に進み続ける事ができる。ここにいられる。その喜びが酒精と相まって、ファリスの躯を芯から暖めた。
迷っていた視線が結局、右横にするりと落ちる。口元が、ほんの少しだけ弛んだ。
(幸せそうに寝やがって……)
ふとファリスの中の子供が頭をもたげた。
(顔に何か落書きしてやろうか)
この飄々とした青年は、余りにも無防備すぎた。何を警戒していたのだろうと、ファリスの張り詰めていた神経が腰砕けになる。この存在感が、心地良かった。
酔いが回ってきた頭で、ファリスはぼんやりと考える。
(やっぱり基本はヒゲかな、それともシワか?)
細い指が、躊躇いがちにゆっくりと青年の輪郭をなぞり始めた。
バッツは最近、精悍さを加えてきたような気がする。人間、というよりも生き物としての逞しさだろうか。逞しいと言っても、体格はほとんど変わらず、どちらかと言えば余分な肉が徹底的に落ち、かえって無駄なく引き締まった位だった。一見した所、ひょろりと手脚が長い、少し恍けた感じの優男である。
だが、ふとした瞬間に覗かせる表情の鋭さに、不敵なふてぶてしさに、ファリスの脈拍が上がる。
少なくとも、一年近く前にファリスの前に現れた間抜けな船盗っ人は、こんな顔を見せなかった。屈託なく開けっ広げに笑うバッツと、冷ややかなまでの厳しさで迫るバッツは、どこまでも両極端だ。それが複雑に混じり合って、まるでマーブルのような青年。
どっちだって良かった。どっちでも構わない。
彼はここにいるだろう? どこかに行ってしまったりはしないだろう? ファリスは素直にそれを信じた。バッツの存在感は揺らぎもせず、ただ広がっている。信じさせてしまうだけの力強さが、無防備な寝姿の内にもあった。
それでも、更に確かめる。
不規則に揺らめく陰影を辿るかのように、ファリスの指が青年の頬から顎に滑って、もう一度後戻りした。
海碧の眼を細める。柔らかな表情だった。
その眼が再び大きく見開かれた時、ファリスの右手はバッツの右手に組み取られている。
「捕まえた」
間延びした声だった。楽しそうに微笑するバッツがおどけた仕種で、彼女の手の甲に口付ける真似をした。
行ってみたいの あの山の向こうへ
知りたいの あの海の向こうが
記憶をたどり 意識を飛ばす
風は教えてくれるの 海をわたり 山を越えて
そして……
そして……
青年の掌は、乾いて温かかった。剣を握っている所為で、分厚く硬くなっていたが、無骨さはない。むしろ優しい。
(……何だ? 何だ何だ……何なんだよっ!)
ファリスは突如、この状況を初めて客観的に理解した。
月のない夜、零れる星灯、揺らめく炎、何故か手を取り合っている二人。
声にならない叫びが喉奥から駆け上がる。言うまでもなく、次の瞬間からのファリスの全行動は、波のように押し寄せる羞恥に支配された。
絡み合っていた視線を外し、右手を強く引き戻す。……と、バッツの手も一緒についてきた。ぶんぶんと勢い良く振り回す。まだついてくる。交互に組み合わされた指は強く、なかなか解けなかった。
「何やってるんだよ?」
いつの間にか起き上がり、胡座を組んだバッツが至極あっさりと訊いた。
「何ってバッツお前……酔ってるのか? いつまでやってんだ、手ェ離せ!」
「酔ってるのはファリスだろ……」
「オレは酔ってない!」
百歩譲って酔っていたにしても、今ので完全に醒めた。
荒々しい動作で立ち上がりかけたファリスを、右手を強く引き寄せる事で押しとどめ、低く呟く。
「逃げるなよ」
半ば脅すような声。
今度こそ手の甲に口付ける。否、それにしてはいささか乱暴過ぎた。噛み付いた、と言った方が正しいだろう。尖った犬歯によって深く痕がつけられる。一点に集中した力に耐えられず、皮膚が破け、鮮血が珠となって弾けた。
行為を恐れたのではなかった。血に驚いたのでもなかった。
それなのに力が抜け、膝が砕けた。正座のような格好でへたり込んだファリスに、先程とはうって変わって優しい声が言う。
「ごめんな、ごめんファリス……痛かったよな」
バッツ自身が戸惑っているようだった。
指が解かれた。温まった手の内側に、さっそく夜気が滑り込む。
のろのろと腕を持ち上げて、傷口を舐めた。潮の味だ。
「ちょっと、……ちょっと待てよファリス、ポーション使うか?」
「こんなのにポーションが使えるかよ、勿体ない」
「じゃ、俺がケアルかけてやろうか?」
「余計勿体ないだろ。何考えてんだ。舐めてりゃ治る」
「んじゃ、俺が舐めてやろ……」
「いらねえよッ!」
身を乗り出した青年を、眉を吊り上げて睨み付けた。
途端に情けなくなったバッツが、がくりと項垂れる。上目遣いに、妙にもの欲しそうな子供の顔でファリスを見た。本当にとんでもないギャップだ。
こんな視線をバッツから受けるのは、初めてではなかった。どちらかと言えば、鋭い目線を浴びせられるよりも、こっちの方に困惑する。
(だからっ、オレにどうしろって言うよ!)
舌先に生臭い潮の風味を感じなくなる。それなのに、まだ沈黙は続いている。頭を抱えたくなった。どうしてこんな時にはテレポが作動しないのか。危機から脱出する為の呪文だというのに。……こうしてテレポすらも恨む。
(大体、オレと酒呑む暇があるなら、クルルにでも構ってやればいいじゃないか。平気な顔してるけど、爺さんが死んで辛くないわけないだろ? 何考えてんだよバッツは!)
炎が小さくなっていた。ほとんどの薪を燃やし尽くしたのだ。それに気付いたファリスはこれ幸いとばかりに、膝に手をあて立ち上がりかけた。枯れ枝など周囲に幾らでも転がっている。
「ファリス」
「何だよ」
返事が短く、無愛想になるのは、動揺を押し隠す為だ。成功しているかどうかは、また別なのだが。
「ここにいてくれ」
懇願するように、祈るように、
「俺の見える場所にいてくれ」
俯いたままの青年がくり返した。
こみあげる思い とどいてほしい
ささやかな願い かなえてほしい
妙に素直に、ファリスが座り込んだ。これはバッツにとってもてんで予想外である。
『どうしてオレがバッツの言う事聞かなきゃならないんだ!』
そう怒ってしまうものと、既に諦観していたのだ。嬉しかったが、その反面バッツは少々ならず焦った。黙って片膝を抱えているファリスは、バッツの行動を伺っているように見える。
大した考えもなしにファリスを引き止めてしまったバッツは、幸せな困惑に浸った。
(しっかし、相変わらず細いよな)
今更ながら再確認する。身長こそあるものの、どこまでも華奢で、ちょっと頼りない。
(言ったら怒るだろうな)
この細腕で荒くれた海賊共を率いていたと言うのだ、無理もするだろう。ファリスの事だから感情の一部を切り捨ててでも、求められる通りの虚像を作り続けたに違いない。
(もっと楽に生きてもいいじゃないか)
哀しいのなら、泣けばいい。辛いのなら、そう言って欲しい。嫌だと拒否をされようが、こっちにはいつでもその用意がある。
(腕どころか胸まで持ってけってんだ……無理だろうけど)
バッツが手を差し伸べる事すら、否、その手を取る事すら自分に赦さないファリス。どこまでも気高く、誇り高く。
死の恐怖など、彼女は認めようとしないだろう。
「なあファリス」
「ん」
「お前は絶対、死なせないからな。どんな事があってもだぞ」
しばらく怪訝そうに眉を寄せていたファリスは、口元を歪めて、皮肉っぽく笑んだ。
「バッツこそ。そっちの方が危険なんじゃないのか? オレのじゃなくて、自分の心配だけしとけばいいんだよ」
「何だよそれ……」
多少の勇気を必要とした言葉だっただけに、少し傷付いたバッツだが、彼もいい加減しぶとかった。ファリスの科白を十二分に噛み砕いて、ふと、ひょんな事に気付く。
勢い込んで言った。
「もしかしてファリス、ずっと俺の事を心配してくれてたのかっ?」
「なっ……!」
取り繕っていた余裕が、厚化粧のようにどさっと一気に崩れ落ちた。
「何だそうかあ。それならそうと言えよなあ」
すっかり頬を緩ませたバッツが、犬か何かのようにファリスの肩に取り付いた。最早怒鳴り付ける気力も、手を引き剥がす体力もない。
「それこそ安心しろよ。俺は絶対くたばらないし、絶対どこにも行かないからな、嫌だって言われても……」
そして……
めを閉じるとみえてくるの あの時の輝きが
耳をふさぐと聞こえてくるの あの時の詩が
背中に腕が滑り降り、髪が撫でられる。
「何てったって、ファリスに『ホの字』だからな?」
耳元をくすぐるような笑い声がして、腕に一層力が込められる。容赦なくかかってくる体重に、躯がぐらついた。
もう酔ってはいない筈なのに、それなのに高熱に浮かされる。普段ならば勢い良く毒づいている所だというのに、弱々しい声しか出ない。
「バッツ…ちょっと……止めろよ」
「ファリスが一言言ってくれれば」
ろくに働かない頭でも、青年が何を求めているか、それだけははっきりと解った。甘い期待に満ち満ちた視線で覗き込まれて、恥ずかしさの余りに顔をそらす。
素直に言ってやるのも癪だった。
悩み抜いた挙句、ファリスは無言のままバッツの肩に頭を預けた。力なく投げ出されていた腕を、迷いつつも背中に回してやる。
バッツが快哉を叫ぶのが、聴こえたような気がした。
希望は大地にめぐみをあたえ……
勇気は炎をともらせ……
いたわりは水を命のみなもととし……
探究は風に英知を乗せる……
<やひとの独り言>
この短編は、CDアルバム『ディア・フレンズ』に収録されている『大森林の伝説』から誕生しました。
〜As I Feel , You Feel〜というのも、かの曲の英題です。
曲中、朗読で紡がれる言葉を途切れ途切れながら小説内に織り込みましたが、
これって想像…否、妄想(笑)の余地があり過ぎる科白ですよね?
それとも僕だけ?
当初心配していたよりも、ずっとバツファリらしくなってホッとしてます。
ちなみに、ファリスが太股に短剣を仕込んでいるのは、やひとの趣味です(爆)。
色気があっていいかな〜という事で。
しっかし読みにくい文章ですね……歯切れのいい文章が書きたいよう。
修行し直して、次の駄文はこれよりもレヴェルアップするようにしますので、まあ赦して下さい。
やひとの拙い作品に最後までおつき合いして下さって、ありがとうございました。
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