リックス夜話



………一人の男が、よく磨かれた二つの大石の前にひざまずいていた。
その大石にはそれぞれ「ステラ・クラウザー」、「ドルガン・クラウザー」と彫られてある。
今は亡き二親の前に頭をたれながら祈りを捧げる男を、じっと見つめる姿があった。

「バッツ……」

その姿は男の背後に声をかけた。
男は小さな呼びかけに顔を上げ、ゆっくりと振り向く。

「ファリスか。どうしたんだ。眠れないのか?」
「ああ、なんだか目が冴えてな…。散歩でもしようと思って」

ファリスは手近にあった木にもたれ掛かって大石に目をやった。
その視線を辿ったバッツは、軽く微笑んで言った。

「オヤジとオフクロだよ。ここに来るのは何年ぶりかな」
「……そっか」

ファリスはそれだけをつぶやくとバッツを見つめた。
まるで次の言葉を促すように。

「オフクロは俺が小さい頃に亡くなったんだ。その後、俺はオヤジとずっとあちこちを旅してた。そのオヤジも3年前に死んじまった。」
「………」
「オヤジの遺言なんだ。オフクロと一緒のところにいたい…ってね。意外とロマンチストだよなー。」

あはは、と笑うバッツに、ファリスは視線を外さないまま口を開いた。

「ずっと親父さんと一緒だったんだ」
「ああ、オヤジからは色々なことを教えてもらったよ。アウトドアやら剣術やら…。さすがに一人になると不自由も多かったけど」
「なんだか、うらやましいな」

それはファリスの正直な気持ちだった。

「俺、親ってのがどんなのか、よくわかんないからさ。ま、海賊のアジトなんかで育ってると、周りはみーんな野郎ばっかりだから。ある意味『オヤジ』だらけと言えるんだけど」

口の端に笑みを浮かべて、それでもどことなく切なそうに言葉を続けていく。

「だからこそ、『本当のオヤジ』ってのにあこがれたりした」
「ファリス……」
「とは言え、居ればいたでうっとーしいとか勝手なこと言ってんだろうけどなー」

ファリスはわざと明るい声を出して、ふっと息をついた。

「なぁ、バッツ」
「ん?」
「オヤジって…いいもんか?」
「………」

バッツは答えなかった。
無言のままファリスの元に歩み寄っていく。
そして…。
唇を重ねた。

「……!?」

いきなりのことに目を見開いたまま硬直するファリス。
ややあって、

「なっ、何を考えてるんだ。おまえは!?」

バッツの胸を押し返しながら、後ずさろうとする。

「今までの会話と全く関係無いことすんなよ!」

月の光に微かに照らされた顔は真っ赤だった。

「関係なくは…ないぞ」

バッツは声こそ小さかったが、ファリスの身体に回した腕の力を緩めることはなかった。

「この木の下で結ばれた男女の絆は永遠だ…って伝説があるんだよ」
「え、永遠って…墓の前に生えてる木にそんな伝説あるわけな…」

ファリスの言葉の最後はバッツの口付けによってかき消された。
一度目よりももっと深い口付け。

「な?ファリス」
「『な?』じゃねえよっ。だから!それとこれとどういう関係があるんだっての」

抵抗することをやめたファリスは、バッツの腕の中で決まり悪そうに、ふてくされたように抗議する。

「大有り。子供が出来れば俺は『オヤジ』になるだろ?。『オヤジ』が良いか悪いか、その目で確かめられる」

悪戯っぽい笑みを浮かべながらバッツはファリスの顔を覗きこんだ。

「こ、こ、子供って…。冗談もいい加減にしろよ」
「俺はいたって真面目だけどな。ファリスは…嫌?」
「嫌…というか…なんというか…」

うつむいたままファリスは口の中で何事かをもごもごとつぶやいていた。しかし…。

「俺、もう寝るッ!!おやすみっ」

と突然バッツに背を向けて駆け出した。

「お、おいおい。待ってくれよぉ」

バッツはファリスの背中に声をかけるが、彼女は立ち止まることなく宿の方へと走っていく。

「逃げられちゃった。…ま、しょうがないか」

バッツは頭をぽりぽりと掻きながら空を見上げた。

「先は長いし…な」





一方のファリスは、布団に潜りこんでからも胸の鼓動が静まることはなかった。
全速力で戻ってきた為だけではないことは、本人がよく分かっている。

「あの、バカ野郎。ばかばかばかばか…」

精一杯罵りつつも、抱きしめられた時の感触に顔が火照る。

「明日、絶対殴ってやる」

照れ隠しの決意を胸に秘めつつ無理やりに目を閉じた。
今日はなかなか眠れないかもしれない…。





あとがき。…というか戯言

バッツ×ファリス歴○年にして初めて書いたショートストーリーでございますー。
大好きなリックスイベントをテーマにしたのに、すっかり内容忘れてるは、文才ないはでこんなになっちゃいました。
前半もあったのですが後半(この話)とあまりつながりが無いのではしょってます。
私としては「近づきそうで近づけない、もどかしい二人」を書きたかったのに…。
バッツ、子作り宣言してますね(笑)。 すっかりとち狂いやがって、どこがもどかしいんだか。(^^;)
これがビデオ版FFにつながっていくわけだ。(んなわけないって)
無茶で唐突な展開もひとえに愛ゆえの突っ走りと思って、許してくださいー。
手直しがいろいろと必要ですな。
これからもっと精進いたします。
それでは。

うひゃ〜!!どうもありがとうございます!!(><)
なかなかバッツ君大胆ですね〜子作り宣言(笑)
あ、あれって裏をかえせば(かえさなくても)プロポーズですよねぇ(きゃ〜!!)
しかも両親の眠る墓の前で…もう読んでいて顔がにやけまくってました〜(はう〜ん)

 

戻る