Jealousy


 何事も、きっかけは些細な出来事から始まるものである。

「これバッツの……」

 彼の部屋を掃除していたファリスが、ふと床に視線を落とすと、
 そこには鈍い銀の光をはなつロケットが落ちていた。

「…ん? 開いてる…?」

 ロケットの鎖を持ち上げたとき、
 ファリスはそのふたが開いていることに気づいた。
 そして、その中にあった写真は――。

「オレの、写真…?」

 キレイな紫色をした女性の写真だった。

「あ、アイツいつの間にオレの写真を……って、ちょっと待った!!」

 ファリスは少し頬を赤く染めながら八時の方向を見ていたが、
 あることに気づき、慌てて写真をもう一度よく見てみた。

「オレ、こんなに髪、短かったか?」

 そう、写真の女性の髪は肩にかかる程度。
 ファリスのように長くは無かった。
 そして、ファリス自身もここしばらく髪を切った覚えは無い。
 ――ということは?

「アイツの母親か…? いや、でも……」

 ファリスはバッツから聞かされた両親の話を思い出す。

「確かキレイな緑色系の髪…だったよな?」

(だとすると、これは……)

 なんとも言えない不安感が、ファリスの胸を横切っていった。



「バッツ、これ…」

 夕食時、ファリスは落ちていたロケットをバッツに返した。

「あっ、サンキュー、ファリス。
 いっくら探しても見つからなくて困ってたんだ。助かったよ」

 バッツは嬉しそうにファリスの手からロケットを受け取る。

「なぁ、バッツ…」
「なんだ、ファリス?」
「その…、なんだ」

 妙にそわそわしていて、らしくないファリスの態度に、
 心配したバッツが声をかけた。

「…どうしたんだ? 何かあったのか?」
「あ、あのな……その、今渡したロケットのことだけど……
 悪いとは思ったんだが、ふたが開いていて…中の写真が見えてたんだ」
「中の…写真?」
「その、写真の女性は誰なのかな…と思って……」

 次第に声が小さくなってゆくファリスを見て、
 バッツはファリスが何を考えていたのかが分かった。

「昔の彼女かと思った?」
「!!」

 悪戯心全開なバッツの言葉に、ファリスの顔は瞬時に赤く染まった。
 そんなファリスを見て、バッツは内心『可愛い♪』と思いながら、
 誤解を解くために話を続けた。

「ファリス、これはオレの姉の写真だよ」
「姉ーーー!?」
「…と言っても、血は繋がってないけどな」

 ファリスの声に軽く笑いながら、バッツは更に話を続ける。

「オレの家の近くに、昔住んでいたキレイな女の人でな。
 あっ、でも女の人って言っても十数年くらい前の話だから、
 今はキレイな人妻になってるかもしれないな」

 昔を思い出しながら、懐かしそうにバッツはそう語る。

「小さい頃、よく一緒に遊んでたんだけどな、
 ある日突然、その人が引っ越すことが決まって…。
 これはその時一緒に取った写真だったと思う。
 ほら、これを広げれば……」

 バッツがロケットから取り出した写真には、
 確かにその女性の隣に小さい頃のバッツの姿が映っていた。

「…でも、何でずっとこの写真を入れているんだ?」

 暗に『今でも好きなのか…?』というニュアンスを込めて、
 ファリスはそう尋ねてみた。
 だがそれは、逆に自分がその写真に対して嫉妬しているということを
 バッツに教えるようなものである。
 そして、当然彼がそれに気づかないわけが無く――

「ファリス、もしかしてヤキモチやいてる?」

 確信の笑みを浮かべて、バッツは嬉しそうに尋ねてみた。

「だ、誰がヤキモチなんてやくか!!」
「あれ〜? じゃあ、何でこのロケットの写真、気にしたのかなぁ〜♪」
「そ、それはだなぁ……」

 ファリスから返ってくる返事を予測していたのか、
 更に彼女を追い詰めるような言葉を返したバッツ。
 意地の悪い笑みを浮かべているバッツのペースに、
 もはや完全にファリスははまっていた。

(楽しい〜♪)

 うろたえるファリスの姿を見ながら、
 バッツは幸せをかみ締めていた……が、それもつかの間。

「…………先に寝る!!」

 ついにファリスが、都合が悪くなったときの最終手段に出てしまった。

「…えっ! ちょ、ちょっと待った。ファリス!?」

 予想外の展開に、慌ててバッツもあとを追ったが、
 あと一歩というところでファリスが自室に入ってしまった。
 当然鍵もかけられている。

「ちょっと調子に乗り過ぎたかなぁ……」

 ドアの前に一人残されたバッツは後悔していた。

「明日、口きいてもらえるかなぁ……」

 そう考えたバッツは血の気が失せていった。
 そして――

「ま、待てよファリス。オレが悪かった!!
 機嫌直してくれ〜〜〜」


 と、ドアを叩きながら謝り続けていたらしい。
 一応、しばらくしてからちゃんとその日の夜のうちに仲直りはしたみたいだが……
 一体どんな方法で仲直りしたのやら……<作者より(笑)


あとがき
勢いだけで書いたヘボ小説。ラブコメ(もどき)…なのかな?
こんな中途半端なところで終わって良いのだろうかと思いつつ、
ここで終わる辺り、なんだかなぁ……(苦笑)。
ちなみに、バッツが写真を入れっぱなしだったのは、たんに忘れていただけです(笑)。
後日、ファリスの写真をちゃっかりと入れる予定ですけどね(笑)。
でも、完成してから気づいたんですけど、
バッツって何歳までリックスにいたんだろう(汗)。

きゃ〜♪♪素敵ですっ♪♪なんといってもやきもちやくファリスが(きゃっ)
あ、あの…どんな方法で仲直りしたんでしょう(笑)
想像におまかせしちゃうととんでもない妄想をしてしまいます私(照れっ)

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