「After 1 Year」


あの戦いから1年の時が流れた。
世界は穏やかさを取り戻し、風は吹き、炎は燃え盛り、水は流れ、大地は作物を育ん
だ。
同時に混乱していた各城も落ち着きを取り戻した。
以前のような生活に戻るにはまだ少し時間がかかるであろうけど、そう先の事ではないだろう・・

「・・様ぁ〜!!・・・ サ様〜!!!サリサ様〜!!!!」
「どう?いた?」
「いいえ・・・ハァハァ・・こちらには・・」
「部屋はどう?」
「今、女官達が・・」
「そう・・いいわ、私がいきます。」
「あ、王女じゃない女王・・!」

その頃、サリサことファリスの部屋では・・・
「どう?」
「ここにはいらっしゃらないようですわ。女官長様」
「まったく・・今日という今日こそ使者殿に御会いして頂かなくてはいけないのに・・」
弱々しくため息をつく女官長。
それを困ったようにみつめる女官達。
「仕方ないわ。レナ様にいらっしゃらなかったとお伝えしてきましょう。」
「はい・・」
パタパタと軽い音がして女官達が部屋から去っていく。
その華やかな気配が完全に消えると同時にスタッという軽い音が響いた。
「はぁぁぁ・・・。やっと行ったか。」
天井裏から軽やかに着地するその人物ー鮮やかな緑色のドレスを身に纏ったここタイクーン城の第一王女だった。
「あ、ヤバ、裾が埃まみれになってる・・・(汗)」
埃をはらっていると、恨みがましい声が背後から聞こえてきた。
「どうしてお姫様が天井から落ちてくるのかしらねぇ・・不思議よねぇ・・ファリス」
「!!!!!レ、レナ!!い、いつからそこに?」
誰の気配もないのを確認して降りてきたというのに一番見つかってはマズイ人物がそこには立っていた・・。
うろたえているファリスにレナが少しあきれた視線をよこす。
「女官達と入れ違いに入ってきたのよ。まったく・・どうせこんなことだろうと思ったのよ。」
ためいきをつきながら側にあった椅子に腰掛ける。
「・・すまない。」
「もういいわよ、別に。あちらには私がきちんとお断りをいれておいたから。」
「・・本当にごめん」
「まぁ、別にファリスは悪くないのよね。本来なら。向こうが勝手に妃になってくれ〜なってくれ〜って言ってるんだから。」
「・・・・」
うつむいて何も言えなくなってしまったファリス。
ちょっと可哀想かしら?などと思いながらもレナが続ける。
「でもねぇ!そんなにイヤなら自分で断ってちょうだいな。毎回毎回いろいろな国の使者に本人に代わって断るの大変なのよ?」
そこまで言うと、しゅんとなってしまっているファリスにレナは笑いかけた。
「ほんとうにゴメン。」
「でも、まぁいいわ。私だってファリスにはずっとここに居てほしいものね。」
そういうとくるりと体を翻し、扉に手をかける。
「とにかく着替えたほうがいいわ。今日はもう何もないはずだからゆっくりしたら?じゃ、私はもう行くね」
にっこりと笑顔を残し去っていくレナ。
それを見送るとファリスは部屋の鍵をかけた。
「・・わかってるんだけど..どうも..フゥ」
埃にまみれてしまったドレスを脱ぎ捨てそのままベッドに寝転がる。
−ここ最近やたらに結婚話が持ちこまれる。
タイクーン側からはそんな事をしていないというので、向こうが勝手に持ち込んでいるのだろう。
そりゃあ、確かに跡継ぎが王女二人の国で、しかも妹が女王というなら姉の自分に話がまわってくるのはわかる。
わかるがしかし・・
「こっちの気持ちってものがあるだろう?」
最初は自分で断っていたけれど、断れば断る程、向こうの熱意があがっていき、結局逃げ回る事を選択したのだ。
毎回のように持ち込まれる豪華な贈り物にも興味を惹かれやしない。
脳裏に浮かぶのは茶色い髪の毛。
「・・バッツ..今頃何やってんだろうなぁ」
エクスデスを倒した直後はよく遊びにきていたバッツも今ではすっかり元の生活に戻って世界を旅してまわっている。
前に会ったのは一体いつだっただろうか。
「会いたい・・なぁ・・」
そのまま、ファリスはゆっくりと眠りに落ちていった。
−数時間後、寒さを感じたファリスは目を覚ました。
(あ、いけね・・あのまま寝ちゃったんだ・・こんなの一枚じゃあ風邪ひいちまう・・・・・?)
突然、窓の外に人の気配を感じた。
静かに枕元から常に常備されている剣をつかむ。
「そこに誰かいるの?!」
誰だ!と叫びたいのをこらえ−一応王女という立場に配慮をした−誰何の声をあげる。
でも、本当のお姫様ならこういう時は助けを呼ぶんだろうななどと考えながらもスラリと剣を引き抜いた。
ゆっくりと窓まで進むと窓を勢いよく開け放つ!
しかし、そこには誰の姿もなかった。
「・・・疲れてるのかなぁ..俺・・」
そのまま窓から出、バルコニーに立つ。
「戻りたい..」
「どこに戻りたいんだ?」
「!!!」
突然横からかかった声にファリスが硬直する。
誰!といいかけてよくなじんでいた、とても会いたかったその気配の持ち主を思い出す。
しかし、名前を呼ぶよりも先に疑問が口をついて出ていた。
「人の部屋の窓で何やってんだ?」
「お前ねぇ..久しぶりに会ったっていうのに何やってんだはないだろう・・」
バッツが頭を抱えて座り込む。
それを見ながら−内心はとても冷静といえる状態ではなかったけれど−冷静さを装い続ける。
「..普通ひさしぶりに再会っていうなら窓じゃなくて扉から入ってくるもんだと思うんだけど..」
(俺も素直じゃないなぁ・・・)
「..驚かしてやろうという俺のお茶目じゃぁないか」
上目使いにこちらを見上げながら−何せまだバッツは座り込んだままなので−バッツは答を返す。
「お茶目っていう年でもないだろう?」
さらに冷静なファリスの答にバッツは拗ねた表情を見せる。
「お互い様ってやつだな。同い年め。それとも・・」
「?」
不自然にあいた間にファリスが不信気に先をうながす。
よっこいしょっと立ち上がりながら、
「いろんな国の王族からプロポーズされまくってるっていう噂のここのお姫様は俺なんかと再会しても嬉しくないのかな?」
と言い、ニヤリと笑った。
「・・!バカ、何言ってんだよ。そんなの・・嬉しいに決まってるじゃないか!!!」
なにせ今の今までバッツの事を考えていたのに・・それにしてもなんで結婚話のことバッツが知ってるんだろう?
言葉には出さないがそう心の中で思う。
思考の前半には気付かなかったようだが、後半には気付いたバッツが続ける。
「それはよかった。なんだ?なんで知ってるんだ?って顔してるなぁ。結構外じゃ有名な話になってるんだぞ?知らなかった?
どこの国の誰がここのお姫様を口説き落とせるのかって。何せ片っ端から断ってるって話だからなぁ。」
「・・・・・・」
二の句がつげないファリスにバッツがさらに追い打ちをかける。
「しかも、そのお姫様ってのは稀にみる美人で、おしとやかだそうだ。一体どこの誰の話なのか、一緒に戦った俺としては気になってね」
今度はファリスが頭を抱えて座り込む。
「なんでそーゆー事になってるんだよ・・」
「まぁ、あくまで噂は噂だってってわけだ。全然おしとやかじゃあないもんなぁ〜サリサちゃん(笑)」
しゃがみこんだファリスをみながらにっこりと笑う。
(でも、美人ってのはあたってるなぁ。前よりもすごく綺麗になった)
口には出さないが、そう思わずにはいられない。
(まぁ、もともと美人だったけど〜。ちょっと離れてただけで、さらに磨きがかかっちゃって・・まったく。気が気じゃないったら)
なかなか立ち直れない様子のファリスにバッツが声をかける。
「ところでファリス。」
「・・・なんで噂になってるんだぁぁ」
「おーいってば。」
「うぅぅぅ」
「お〜い。帰ってこ〜い(笑)まったく仕方ないなぁ」
バッツが纏っていたマントをファリスにかける。
「!びっくりした!なんだよいきなり!」
「あのねぇ・・(苦笑)さっきから何回も呼んでたんだけどね(^^;)まぁ、いいや。」
「あ、そうだったの?ごめん・・」
「いいよ。別に。ところで、そ〜んなセクシーな格好でこんなとこ立ってたら風邪ひいちゃうんじゃないか?」
「!!!!!」
(そういえば、ドレス脱いでそのままだった・・/////)
ファリスが真っ赤になる。
「まぁ、俺としては大変に目の保養だったんだけどね」
「な、なにか着てくる!」
マントで体をつつみながら慌てて部屋の中へと駆け込む。
「はぁ〜。俺ってなんて紳士なんだろう」
苦笑いしながらのそのつぶやきがファリスに聞こえたかは定かではなかった。

 とにかくドレス以外のものを着て戻るとバッツはまだそこに立っていた。
(よかった。まだいる・・)
「ん?」
「い、いやなんでもない//」
「さて。今日俺がここに来たわけ知りたくない?」
「・・・おしとやかと噂のここのお姫様を見に来たんだろう?あいにく噂通りじゃなかったみたいだけどさ。」
拗ねたような口調でファリスがそう答える。
それにさらに苦笑いをしながら、バッツは答えた。
「半分正解。」
「半分?」
「そう。半分だけ。」
「じゃあ残りは?」
それには答えず、バッツはファリスの手をひいた。
バランスを崩したファリスがそのままバッツの腕の中に倒れ込む。
「な・・!ちょっとバッツ!」
離れようとするファリスを強い力で抱き締めると、バッツはつぶやいた。
「答・・知りたくない?」
「・・・・・」
ファリスは答えない。
が、かすかに頷き肯定した。
腕はほどかないままでバッツは続けた。
「うん。あのさ・・・しかし相変わらず細いなぁ。俺とほとんど同じ身長のくせに。」
「・・バッツ少し背伸びたんじゃないか?」
離せというつもりが、なぜか口が違う言葉を紡ぐ。
(・・なんか落ち着く・・)
「あぁ。少し伸びたよ。そっちは痩せたんじゃないか?」
細い腕に細い腰。
しかし、決して骨張っている事はなくふんわりと柔らかい。
「ファリスは綺麗になったよね。」
「おま・・何を恥ずかしい事言って・・」
「事実だからいいじゃないか。前も綺麗だったけど、今はもっと綺麗。どんどん綺麗になっていくんだろうね。」
「・・・答は?」
体を離しながらそう尋ねるがさっきよりも強い力で引き戻された。
「それが答の残り半分。」
「?」
わけがわからない。
自分の理解力が悪いのか、相手の説明が悪いのか・・・確実にバッツの説明不足だろう。
「だからさぁ。本当はもうちょっと時間をおこうと思ってたんだよ。けど、側まで来たらもういても立ってもいられなくて。」
おまけに、と続ける。
「間違ってどっかのバカにもってかれたりしたらそれこそ俺は一生後悔しちゃうからね」
「だから?」
「だから連れていっちゃおうと思ったわけだ。」
「・・・!」
しばらく考えたあと、言っている意味に気付いた。
「ようするに、俺に結婚話がきているっていう噂を耳にして様子を見るだけのつもりでここまで来たけど、会ったらそんな悠長な事をいってられなくなったって事か?」
「ピーンポーン」
ファリスが真っ赤になる。
「でも、連れていっちゃう場合さぁ。本人の承諾ってのがいるかなぁなんて紳士な俺は思ったりしたんだけど・・」
バッツの顔も微妙に赤かった。
「で、断られたら一生一人旅しようかなぁなんて、まぁボコは一緒だけどさ。..」
「このバカ!!」
そこまで聞くとファリスが怒鳴った。
「こっちの都合だぁ?そんなのいいに決まってるじゃないか!俺だって、俺だって..」
ぎゅっと抱きつく。
「いつになったら戻ってくるのかって・・ずっと思ってたのに・・様子見るだけで去って行こうとするなんて・・」
顔をあげようとしないファリスをバッツが抱き締める。
「うん。ごめん。俺が全面的に悪かった。でも、自信がなかったから・・」
「俺だって、そんなものない・・」
「自信のない同志一緒にいれば大丈夫・・かな?」
「大丈夫なんじゃないか?」
顔をあげるとファリスはにっと笑った。
「行こうぜ.」
「ファリス。城はどうするんだ?」
ちょっとためらった後ファリスが答える。
「レナがいるさ」
「そうだな」

−数分後城下町をチョコボで駆け抜ける二人の姿があった。
そして、ファリスの部屋の窓には一枚の紙切れ。
『お姫様は頂いていきます。バッツ』

やがて朝になり、レナがそれをみつける。
「まったく・・・捜索隊差し向けてやろうかしら。・・・本当に世話の焼ける二人だこと」
紙切れをポケットにしまうとレナはつぶやいた。
言葉とは裏腹に顔は微笑んでいる。
「さぁて。私もがんばらなくっちゃ!お姫様の代わりに女王様がしっかりしなくちゃいけないものね!」
やる事はいっぱいあるのだから。
それでも..とここにいない人物に話しかける。
「幸せに決まってるだろうけど、もし、ファリスを不幸にしたら地の果てまで探しにいってここに連れ戻すからね。バッツ」


−実際にお姫様捜索隊が結成されたかどうかは神のみぞがしる・・・(笑)

きゃ〜!!!あまあまでかなりうかれて読んでましたぁ〜!!(笑)
こ、これって…つまり…愛の逃避行…かけおち…ああ…
バッツのジョブはシーフだったのかしらん(>▽<)ああ素敵…ありがとうございます(にやそ)

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