結婚前夜・狂騒曲


注意・この話は自称バツファリですが、著しくキャラクターのイメージをぶち壊しています。
夢を持って見るのは止めましょう(笑)

 その話は、オレにとって唐突すぎた。
 朝、ファリスが目を覚ますとほぼ同時にレナが彼女を訪れてきた。
 開ききらない目をこすっているファリスに、レナは話があるの、と切り出し簡潔に言った。
「・・・わたし、バッツにプロポーズされたの」
「へ・・・へえ。よかったじゃないか」
 ファリスはその言葉に、戸惑いを隠せなかった。レナはそんなファリスに気づいていないのか、軽く微笑む。
「・・・うん。ありがとう姉さん。
 そうだ。今ね、バッツとクルルも来てるのよ。あとで会いにいったらどうかしら?」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ、わたし行くね」
 レナが出ていった後、ファリスはおもむろにベッドにうつぶせに倒れこんだ。
 布団を握る手に力がこもる。
(・・・バッツがレナにプロポーズ・・・姉として、仲間として喜ぶべき事だよな・・・。
 なのに・・・なんでこんなに胸が痛いんだよ・・・)
 レナの誘い通りにバッツとクルルに会いに行ったファリスだったが、その間一度もバッツと視線を合わせることはしなかった。
 その日の夜。
「ファリス、こんなところにいたんだね」
 なかなか寝付けず、こっそりタイクーン城を抜け出して夜風にあたっていたファリスは、不意に後ろからかかった明るい声に苦笑を浮かべる。
「クルルこそ・・・何してんだ?」
 毛糸のガウンを羽織ったクルルは、振り向かずに問いかける彼女の隣に歩み寄る。
「あたしはファリスを探してたんだよ」
「・・・オレを?」
「バッツとレナが探してたよ。頼みごとがあるとかって言ってたけど」
 ファリスは一瞬ためらった。なるべくなら顔を会わせないでいたかったから。
 特にバッツとは。
(・・・こんなことでうじうじ考えるのってオレらしくないよな。
 ・・・なんでこうなったんだろ・・・)
 深々とため息をついた後、ファリスは渋々城へと戻っていった。
 バッツとレナの二人は普段は応接室として使われているところにいた。
 ファリスはためらいつつも、ドアノブに手をかけた。
「姉さん!探してたのよっ」
 ドアが開き、ファリスが入ってきたのを確認してからレナはファリスに駆け寄った。
「悪いな。外を散歩してたんだ」
 レナに謝罪しながら、ファリスは応接室の椅子の一つに腰をかける。無意識のうちにバッツが視界に入らないような位置に座っていた。
「・・・で、頼みごとっていうのは?」
「他でもないんだけど、姉さんにわたしたちの仲人を頼みたいのよ・・・どうしても姉さんに頼みたいってバッツが聞かなくて」
 レナの言葉に照れたように頬をかくバッツ。二人は顔を見合わせて思わず笑う。
 そんな様子を見てファリスは胸の奥に苛立ちが沸き起こるのを感じていた。
 その感情が二人に対する嫉妬であることを彼女はまだ認識できていなかった。
(・・・なんで、オレなんだよ・・・他に誰だって仲人やる人間なんているだろ!)
「だめなら・・・しかたないけど・・・」
 そんなファリスの心境を読み取ったのか、レナが残念そうに呟いた。
(・・・断ったら・・・不自然か・・・)
 ファリスはそう考え、結局仲人を引き受けることにした。彼女の返答を不安気に待っていた二人の表情が晴れる。(いいんだよな、これで・・・)
 ファリスの自問に答えはなかった。
 コンコン。
 タイクーン城に夕暮れ押し迫る頃、ファリスの部屋のドアがノックされた。
 コンコン。
 部屋の中からの返答がなかったからか、再びノックの音が鳴り、今度は声もした。
「クルルだけど、いーい?」
「ああ、開いてるぜ」
 ノックの主を確認したファリスはベッドに座ったままで、クルルを中に招き入れる。クルルは手に小さな紙を持っていて、それをファリスに差し出した。
「バッツとレナの結婚式用に、友人代表のスピーチ書いたんだ。ちょっと読んでみてよ」
 ファリスは受け取った紙にしばらく目を通してから、クルルに返して言う。
「いいんじゃないのか?」
「本当?よかった〜」
「・・・少し美化しすぎだけどな」
「いーの、いーの。何事も脚色が肝心だもんね。
 それはそうと、バッツたち、何の用だって?」
「仲人頼まれた」
「ええっ!!うそぉっ?!
 ・・・で、もしかして引き受けちゃったの・・・?」
「・・・一応・・・」
「な〜るほど。だからかぁ・・・」
 一人で納得するクルルは、いぶかしげに視線を送るファリスに気付き、彼女に向かって口元を緩める。
「昨日から浮かなかった表情が、更に沈んでるんだよね」
「・・・んなことねえよ」
 ふてくされたようにぷいっと横を向いて、ファリスは言い放つ。
「意地っ張りだね。顔は正直なのに。
 どうしてそんな顔してるか、当てようか?」
 おもしろそうにクルルはファリスの真正面に回り込み、彼女の顔をのぞき込む。
「やらなくていい」
 そんなファリスの言葉は完全に無視して続けるクルル。
「ずばり!バッツがレナにプロポーズしたことがショックだったんでしょ?」
 ファリスは視線を逸らしたままで何も言わなかった。クルルはその態度を肯定と受け取り、オーバーに頷く。
「やっぱりね〜。ファリスは素直じゃないんだよ。
 ・・・バッツの事、好きだったんでしょ?」
「・・・よくわかんないよ。そういうことはさ・・・」
 床に視線を落とし、両手を膝の上で組んでファリスは静かに切り出した。
「結婚の話を聞いたのも、自分の中にこんな気持ちがあるのに気がついたのも突然だからな・・・」
 ファリスの言葉をクルルは茶化す事なく、じっと耳を傾けていた。
「・・・でもさ。これだけは言える。
 バッツに対するオレの気持ちは・・・好きとは少し違うんだ」
「つまりは・・・愛してるってこと?」
「・・・たぶん、そっちの方が近いと思う」
 クルルの言葉に、ファリスは少し考えて頷いた。
 その瞬間、クルルの表情に笑みが浮かんだ。彼女の顔は達成感であふれている。ベッドに腰掛け、うつむいているファリスに見えることはなかったが。
「やっぱり、仲人は辞退しよう。こんな気持ちじゃ、二人に悪・・・・・・?」
 言いかけてファリスは顔をあげる。ついさっきまで自分の顔をのぞき込んでいたはずのクルルが、いつの間にか自分に背を向けて立っていたからだ。
「バッツ隊長っ!!クルル隊員がんばりましたっ!」
「・・・へ・・・?」
 いきなり敬礼をして、ドアの方へと走り出すクルル。そこには、バッツとレナも立っていた。
(・・・いつの間に!)
 自身のことで手一杯でファリスはその存在に全く気がついていなかった。
「よくやったぞ!クルル隊員!!作戦大成功だっ!!」
 バッツとクルルは互いを讃え合いながら、両手を握り合っていた。
「なるほど・・・そういうことね」
 喜び合うバッツとクルルを悟りきった冷めた目で見ているレナ。対称的に全く意味のわからないファリスは、二人に詰めよる。
「・・・一体どういうことなのか、はっきり説明してもらおうか・・・?」
 ファリスの剣幕にバッツとクルルは思わず一歩後ろに下がる。
「え・・・えっと〜、バッツがね、ファリスの本心を知りたかったらしくて・・・」
「・・・で、オレとレナをハメた・・・と?」
 ファリスの抑揚のない声が、彼女の怒りを如実に表していた。慌ててクルルはバッツの手を振りほどき、レナの後ろに隠れる。
 一人取り残されたバッツは、引きつりながらも律儀に答えた。
「わ・・・悪気はなかったんだけど・・・それしか方法が思い付かなくてさ・・・・。
 ・・・で、クルルに協力を仰いで・・・その・・・」
「その方法の発案だけでも悪気十分だっ!!」
 とうとう抑えきれず、ファリスは怒鳴った。そして、壁に掛けてあったエクスカリバーを手に取る。
 逃げ腰のバッツは、それでもなんとか場の雰囲気を好転させようと、努めて明るく振る舞ってみた。かなりぎこちなかったが。
「あれぇ?ファリスちゃん。剣なんか持ってどうしたんだい?」
「これかい?バッツくんを成敗するためだよv
 ・・・覚悟しやがれっ!!!!」
 どうやら裏目に出てしまったようだ。
「ファリスーーー!落ち着けぇーーーーー!!」
 迷わず走り出しながら、バッツは必死にファリスを宥めようとしたが、すべて無駄に終わる。
 乙女心を弄んだ(少なくともファリスはそう思っている)罪は万死に値する。
 例えそれが自分の愛しい男だろうが何だろうが関係ない。
 容赦のない剣撃がバッツに襲いかかった。
「うわあぁーーーー!やめてくれーーーー!!」
「前言大撤回っ!!
 お前なんか・・・大っ嫌いだぁっ!!!!!」
 ファリスは大声で怒鳴ると、絶叫しているバッツに向かってエクスカリバーを思いっきり降り下ろした。
 追記。
 遠くで悲鳴が響く中、クルルはレナの後ろからひょっこり出てきて頭を下げた。
「ごめんね。レナも騙す事になっちゃってさ」
「気にしないで。わたし、バッツが姉さんのこと好きだって知ってたし」
「・・・それなら、なんでプロポーズ受けたの?」
 不思議そうに問うクルルにレナは優しく笑いかける。
「真意は他にあると思ってたからね。
 それに・・・」
 笑顔を微笑みに変化させるレナ。その表情は笑っていたけれど、先ほどの優しい笑顔と異質のものとしてクルルの目には映った。
 思わずクルルは二、三歩後ずさりし、次の一言で引きつった。
「たかがリックス出身の庶民に身の程を身の程を知らせるいい機会だと思ったのよ。
 わたしがバッツなんかを本気で相手にする訳ないじゃない、ねえ?クルル」
「・・・そ・・・そだね・・・」
 クルルの声は果てしなく乾いていた。
(あ・・・悪女だ・・・)
 クルルの思考に重なるように、どこからともなく断末魔の叫びが微かに聞こえた。
                  えんど★


あとがきらしきもの。
タイトルを見て期待した方(いるのかな?)申し訳ありません、こういう話です(汗)
レナは完全に別人、バッツに至っては・・・。
ファリス以外は皆演技してるし・・・役者のジョブを全員つけてたって事にしておいてください。
・・・これってバツファリなのかな・・・(不安)

ははは…私もファリス同様、もののみごとにだまされました(笑)
しかし…このレナ、こわすぎっ(T▽T;じょびー
こんな妹、絶対ほしくな…ガフゲフッ!!!(爆)

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