止められない気持ち

 

ファリスは窓を眺めていた。タイクーンを囲む木々がざわめいている。

(今までずっと海を見てきたおれがこんな景色見てるなんて…未だに信じられない)

窓から見える一大の緑を眺めながらファリスはふと海賊の時、毎日のように見ていた
青い海を思い出した。

(今まで海賊の頭だったおれが…タイクーンの王女か。ははっ、冗談みたいな話だな。
 本当に…。冗談だったらいいのに)

苦笑いをしながら唯一の父親からの形見であるペンダントを掲げた。

(あの旅は終わった。クリスタルを守る…エクスデスの野望をうち砕く戦いは終わったんだ。
 父さんの仇も打ちおれたちは戦いから解放された。おれにとっては幸せなはずなのに…
 なんでだろう、何故か寂しい。)

混乱する気持ちを抑えようとファリスはベットに横たる。着心地の悪いドレスが彼女の
気分をもっと悪くさせていた。

「きっと……あいつと会えないせいなんだな。」

意志もないのに勝手に気持ちが声に出てしまいファリスはそっと苦笑いをした。

 

トントントン

 

「……誰?」

「姉さん、入るわよ」

ドアをノックして誰かが入ってきた。レナだ。

 

「ここ最近ずっと元気ないわね。大丈夫?」

 

レナは持ってきた紅茶を入れながら心配そうにファリスを見た。

「そんなことないさ。おれは普通だけど…」
「普通…ねェ。ふふっ、嘘つき〜!」

レナはにやりとした表情でファリスをにらむ。

「な…なんだよっ、その目は」
「隠したって私には分かっちゃうのよ。姉さん♪」
「な…なんのことだよ…」

「寂しいんでしょ。バッツがいなくて…」
「な!!??」

まさに図星を突かれたファリスは何も反論できなかった。真っ赤なファリスにレナは
意地悪そうにくすくすと笑い出した。

「何がおかしい!?別におれはあいつのことなんか何も思ってないよっ!!」
「ふーん、バッツのこと思ってないの。じゃあ…これはいらないのね」

レナはポケットから一枚の手紙を取り出した。

「ん、それは?」
「バッツからよ。姉さん宛に」

「ええっ!?」

ファリスは驚きの混じった笑顔で手紙を取ろうと手を伸ばした。しかしレナは横たわってる
ファリスからは届かないように手紙を上にあげる。

「お…おいっ、レナったら!!渡せよ!」
「うふふ〜、イヤよ。バッツのことなんて何も思ってないって言ったでしょ?」

「れ…レナ!!」

ファリスは真っ赤に怒ったような表情をするとレナから背を向けた。

「ふふ、ごめんなさ〜い!だって姉さんをからかうのって凄く面白いんだもん。」

「もう!!ひどい妹だな…」

 

レナはごめんごめんとファリスに謝ると手紙をそっと渡した。

「それじゃ、私は大臣に呼ばれてるからもう行くわ。あ、その紅茶暖かいから飲んでね。」
「ああ、分かった。ありがとうレナ」

レナはにっこりと微笑むと部屋から出ていった。

 

 

(あいつからの手紙…。お、おれ何でこんなに緊張してんだ!?)

どんどん早さが増してくる脈拍の音を押さえながらもファリスは封筒を開け手紙を
読み始めた。

 

『Dear ファリス姫

 よっ!元気にしてっか?バッツだ。手紙を書くなんて俺らしくないかもしれないけど
 たまにはらしくないこともしてみようと思って今回はこうして文章を書いてる…。』

「……。ははっ、あいつらしい文章だ」

 

『最近俺は再び放浪の旅を始めた。やっぱり俺は村でじっとしてるよりも、こうやって
 あてもなく自由に旅をしている方が性に合ってるらしい』

 

「…………」

 

『最初は、いや、最近まではそう思って旅をしてたんだ…。けど、けどな今の俺は…なんか
 違うんだ。何かよ、ただ一人で歩いているのが…怖くなっちまって。」

 

「バッツ……」

 

『やっぱり、お前ら四人と…、いや。お前と出会っちまったせいなんだろうな。
 お前と冒険をしたこと。お前と旅をすることが俺にとって凄く幸せだったことを。
 エクスデスと戦ってるときは全然気づかなかったんだけど…な。最近、お前と
 離れて。一人で旅を始めてやっと気づいたんだ』

 

「………!?」

 

『また…いつかお前と旅をしたい…。ファリス、お前に会いたい。

 

                           バッツ 』

 

「バッツ……」

ファリスの瞳からはいつしか喜び、そして寂しさの涙であふれていた。

バッツに会いたい、その気持ちだけでファリスの胸はいっぱいになった。

 

 

ファリスはそっと決めていた。昔のように自由になり、またバッツと一緒に
旅を始めることを。
たとえ自分がタイクーンの女王であっても…。自由の身にはなれないということを
理解していても。彼女の気持ちはもう抑えられないものになっていた。

「バッツ…、おれもお前と旅をする」 

夕日がファリスを照らす。その瞳からはまるで火のクリスタルのように勇気と決心で
輝いていた。

 

 

 

・〜・〜・あとがき〜・〜・〜・

ということで水瀬の初FF小説はバッツとファリスメインでいきました。

このお話はいつもお世話になっている某所の掲示板でFF5のOVAが発売されている
という話題を読んで思いついたものです(笑)

今までずっと海賊だったファリスがいきなり王家の生活に耐えられるのか、エンディング後は
一体どうなったのかという疑問心から少し妄想プラスで書き上げました(爆死っっ)

駄目もとで頼んだのに快く転載OKしてくださって
本当にありがとうございます!!某所っていうのはここですね?(笑)
あの話題からこんな素敵なお話が出来てしまうなんてすごいです〜(><)
これからもじゃんじゃんバツファリな小説を書いていってくださいね!
 

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